前回は「動物形土製品」がどのように見つかり復元されたかをお話ししましたが、復元後、この土製品が何を表現したものであるかが大いに話題になりました。最初はヒレ状の手足を持つのでアザラシなどの海獣説、手足を広げた形からムササビ説などさまざまな動物が候補になりました。立てた状態と倒した状態ではずいぶん印象が違います。最近では倒した状態での展示が行われることもあり、そのときは水鳥を表したものと説明されています。確かに横から見ると、クチバシがあり飛んでいる水鳥にも見えますが、鳥にしては最大の特徴である羽根が随分と貧弱です。皆さんは何に見えますか。
当センターでは、今のところ、あえて具体的な動物名にこだわることはせず、縄文人の心に宿った、さまざまな生き物の姿を表現したものととらえ、「動物形土製品」という名称を用いています。また、国指定重要文化財の正式な名称でもあります。
特異な姿や大変ていねいな作り方、ベンガラという赤い顔料が塗られていた痕跡もあることから、実用的な道具ではなく、動物への信仰などの精神的な文化の中で生まれたものと考えられています。
さて、この「動物形土製品」ですが、今年9月10日からロンドン市の大英博物館で開催される日本の土偶展「THE POWER OF DOGU」に、67件の土偶の一つとして出品されます。実は、昭和59年カナダ、平成7年イタリア、平成10年フランスと3度の海外展示の実績を持つ日本の縄文文化を代表する逸品でもあります。 全く文化の異なるイギリスの皆さんは、この土製品にどんなパワーを感じるのでしょうか。ちなみにロンドンでは立てた状態で展示されるそうです。
横から見ると確かに飛ぶ水鳥にも見える?
(写真:千歳市教育委員会埋蔵文化財センター所蔵)
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